Essay

時短もいいけれど。「続かなかったこと」をAIと考える

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記事の表紙。「時短もいいけれど。続かなかったことをAIと考える」宮崎真理|AI×家事

暮らしの中で生成AIを使ってみたい。でも、何を頼めば役に立つのかわからない。

そんなときは、「早く終わらせたいこと」だけでなく、「やりたいのに、手間が多くて続かなかったこと」を思い出してみると、使い道が見えてくるかもしれません。

私の場合は、家族で図書館を利用することでした。

AIと一緒に予約や貸出状況を管理する仕組みを作り、確かに手間は減りました。ただ、それ以上にうれしかったのは、自分の暮らしに合う方法を、自分で作れたことです。

続かなかった理由は、読むこと以外にあった

わが家には5人分の図書館カードがあります。一人15冊まで予約できるので、合わせれば最大75冊。本を借りるための枠は、十分にありました。

それでも、うまく活用できていませんでした。

ネット書店で気になる本を見つけたら、図書館のサイトを開き、同じ本を検索する。誰のカードに予約枠が残っているかを確認し、借りたあとは返却期限を管理する。

一つひとつは難しい作業ではありません。でも、家族5人分となると確認することが増えます。途中で子どもに呼ばれ、そのまま予約を忘れることもありました。

本を読みたくないわけではない。図書館を使いたくないわけでもない。

本を見つけてから借りるまでの細かな手間が、読書を続けるうえでの障害になっていたのです。

AIと作ったのは、わが家の図書館を使いやすくする仕組み

そこで、困っていることをAIに伝えながら、二つの仕組みを作りました。

一つは、ネット書店で見つけた本から、図書館の在庫確認や予約へ進めるもの。

もう一つは、家族全員の貸出状況や返却期限、予約した本の取り置き期限を、一画面にまとめて確認できるものです。

最初から作り方を知っていたわけではありません。AIに相談して方法を教えてもらい、試して、動かなければまた相談する。その繰り返しでした。

実際の画面や詳しい使い方は、with classの図書館活用コラムで紹介しています。

仕組みを作ること自体には、時間がかかっています。だから、使い始めてすぐに「何分得をした」と説明できるものではありません。

それでも、わが家で繰り返し困っていたことに、自分で手を加えられた。そのことに、おもしろさを感じました。

この感覚は、以前書いた生成AIで家庭の不便を仕組みにする——家事に正解がなくても役立つ理由にもつながっています。

減った手間より、続くようになったことを見る

仕組みを使うようになって、気になる本を忘れる前に予約しやすくなりました。家族分の返却期限も、頭の中だけで覚えておく必要がなくなりました。

その結果、以前より多くの本を借り、家に未読の本がある状態を続けやすくなりました。子どもたちが月に10冊以上読む月も出てきました。

AIが子どもに本を読ませた、という話ではありません。読みたいときに手に取れる本を、家に置いておきやすくなったということです。

「予約作業が何分短くなったか」だけを測ると、この変化は見えにくくなります。

私が望んでいたのは、予約を素早く済ませることだけではなく、家族が本に触れやすい暮らしでした。時短は、そのために役立った変化の一つだったのだと思います。

AIに頼むことは、「止まっているところ」から考える

自分の生活に置き換えるなら、次の三つを順番に考えてみると、相談したいことを整理できます。

  1. 本当は、何を続けたいのか。
    わが家なら、家族で図書館の本をもっと借りて読むこと。
  2. どの手間で止まっているのか。
    本の検索し直し、カードの切り替え、家族分の期限の確認。
  3. その手間が減ったら、何が変わってほしいのか。
    気になった本を忘れずに予約し、家に読む本がある状態を続けたい。

ここまで言葉にできれば、AIへの相談も「便利な使い方を教えて」から、もう少し自分に合ったものになります。

たとえば、こんな聞き方です。

家族で図書館をもっと使いたいのですが、本を検索し直したり、家族分の期限を確認したりする手間で止まってしまいます。続けやすくする方法を、今のやり方を少し変える案も含めて、一緒に考えてください。

最初から、システムを作る必要はありません。確認する情報を一か所にまとめるだけで済むかもしれませんし、手順を一つ減らせば十分かもしれません。

AIの提案を試すかどうか、手間に見合うかどうかは、自分で判断します。作った仕組みも、実際に使いながら確認や修正が必要です。

相談する内容が小さすぎる、と遠慮する必要もありません。生成AIに何を聞けばいい?日常の小さな質問から使い方を広げる方法で書いたように、日常の小さな相談からわかることもあります。

「何分減ったか」に、もう一つのものさしを

作業が早く終わるのは助かります。私も、探し回る時間や、毎回同じことを確認する手間は減らしたいと思っています。

ただ、AI活用の成果を時短だけで考えると、見落としてしまうものがあります。

今までできなかったことが、できるようになったか。手間が多くて続かなかったことを、続けやすくなったか。

わが家の図書館の仕組みは、このものさしで見るほうが、変化をよく説明できます。

AIに何を頼むか迷ったら、やるべき作業だけでなく、手間の向こうに置き去りになっている「本当はやりたかったこと」にも目を向けてみてください。そこにも、相談の入口があります。

著者について

宮崎真理

『AI×家事』著者

神戸大学大学院で生体計測工学を専攻し、修了後はオムロン株式会社で技術職として勤務。出産を機に10年間の専業主婦生活を経て、2023年より生成AIを家事・子育てに取り入れ、暮らしの中での活用を実践している。

WOMAN AI AWARD 2026 ライフ・イノベーター賞受賞。講談社「with class」でコラムを連載するほか、テレビ出演、雑誌・Webでの執筆・監修などを行う。

3兄弟の母。1000日以上にわたる生成AIの実践経験をもとに、理系出身・元専業主婦の視点から、家庭という最もテクノロジーが遅れた場所を、生活者自身がアップデートしていく可能性を発信している。

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