Essay

知りたいことが、毎日届く。家事から趣味へ、AIと仕組みを作る楽しみ

公開 更新

私は、家事や子育てで生成AIを使った経験を『AI×家事』という本にまとめ、日々の実践を発信している。AIに相談しているうちに、使い方は少しずつ広がってきた。最近は、答えをもらうだけでなく、必要な情報が自分に届く仕組みも、AIと一緒に作っている。

たとえば、家族5人分の図書館の本。誰が何を借りていて、いつ返すのかを、それぞれのカードで確認するのは手間だった。そこで、家族分の貸出状況や返却期限を一画面にまとめる仕組みを作った。その過程と実際の画面は、with classの連載記事(新しいタブで開きます)でも紹介している。

そして今は、趣味のランニングでも同じようなことをしている。走った記録を自動で集め、目標と照らした振り返りが毎日届く仕組みだ。

出発点は、「自分が知りたいことを、毎回探し回らずに見られるようにしたい」。使ってみて、気になるところをAIと直していくうちに、その工夫自体も楽しみになってきた。この記事では、ランニングの実践を通して、暮らしに合う道具をAIと作り、使いながら育てている過程を紹介する。

記録はあるのに、何が分かるのか分からない

私は男子3人を育てながら、早朝や夜のすきま時間に走っている。2026年の京都マラソンでは、42.195kmを3時間37分で走った。次は3時間30分を切ることが目標だ。

走るときにつけているのは、Garminというメーカーのスマートウォッチ。走った距離や速さ、心拍数のほか、睡眠に関する記録も残る。

けれど、以前の私は、ほとんど距離と速さしか見ていなかった。速く走れたらよかった、遅かったらよくなかった。練習も、その日の気分で決めていた。

数字は並んでいる。でも、前より走れるようになっているのか、今の練習で目標に近づいているのかは、よく分からない。

そこで、記録の画面を撮ってAIに見せ、数字の意味を聞くようになった。その後、データをファイルに書き出して渡す方法も試した。

分析を読むのは面白い。ただ、データを取り出し、保存し、AIに渡す作業は、毎回となると面倒だ。走った記録は増えていくのに、振り返るための準備が続かなかった。

自分で渡しに行かなくても、振り返りが届くように

それなら、記録を取りに行くところから自動化できないか。AIに相談しながら、自分の走れる曜日や目標に合わせて、仕組みを作り始めた。

今は、毎日決まった時間に、走行記録や睡眠のデータを自動で取得している。それを練習計画と照らし合わせ、AIのコメントとともに、Discordというチャットアプリへ送る。自分のパソコンを開いて待つ必要はない。

届くのは、今日の練習の振り返り、今週の計画に対する進み具合、翌日の練習案などだ。

たとえば、平均の速さだけを見ると分からない、走り始めから終わりまでの変化も分析に含めている。後半に速く走れたとしても、大会で目指す速さを一定の距離で保つ練習になっていたかは、別に確認する必要がある。

ただ速く走れたかだけでなく、何のための練習で、その狙いに合っていたか。そういう観点で振り返れるようにしている。

時計には残らない事情も、一緒に渡す

自動で記録を集めるだけでは、足りないこともある。

時計に運動の記録がなくても、それだけでは、なぜ休んだのかまでは分からない。疲労感、痛み、意図した休養などは、私が短いメモで補えるようにした。

AIの過去のコメントも保存し、最近のコメントや月ごとの要約を、次の分析に渡している。今日の数字に加えて、これまで何を課題にしていたかも参照できるようにするためだ。

自分の目標、実際の記録、数字に残らない本人の事情。それらを一緒に渡して、振り返りを作っている。

実際に、疲労が残っていると考えられる日に強い練習を入れがちなことを繰り返し指摘され、疲れている日は距離を短くしたり、練習量を減らす週を設けたりするようにもなった。

AIの評価は一つの見方として受け取り、痛みや強い疲労があるときは、自分の身体の感覚を優先している。目標の記録を達成できるかは、これからだ。

私のために作ったのに、私が読んで分からない

最初にできあがった管理画面は見づらく、説明にも専門用語が並んでいた。

私のために作っているのに、私が読んで分からない。それでは使い続けられないので、AIに直してもらった。

練習の距離と速さだけでなく、何のためにその練習をするのかも知りたい。睡眠の記録も一緒に見たい。昨日のコメントを、今日の分析にも使いたい。

最初から、必要なものを全部思いついていたわけではない。届いたものを読んで、使ってみて、初めて「ここが分からない」「これも欲しい」が出てくる。

それをAIに伝えて、また直す。動かなければエラーを見せて、原因を一緒に探す。情報を増やすだけでなく、自分が読んで意味をつかめるところまで、手を入れられる。

この往復が、私は面白い。練習する自分と、その記録を見て考える自分の両方に合わせて、道具を変えていける。

生成AIで家庭の不便を仕組みにするという記事でも書いた、暮らしの中で使って、直していくやり方が、趣味にもつながっていた。

走る楽しみに、作る楽しみが加わった

私は大学院で生体計測工学を学び、身体から得られるデータを扱っていた。そのころの関心は、私が生成AIに惹かれた理由でも振り返っている。

今、その興味の対象にあるのが、自分の走った記録だ。以前は距離と速さしか見ていなかったのに、AIと振り返るうちに、走ることと同じくらい、データを見ることにもはまり始めている。

図書館の仕組みでは、本を借り続けるための手間が減った。ランニングでは、記録を振り返るための手間が減り、そこから考える楽しみが増えた。時短もいいけれど。「続かなかったこと」をAIと考えるで書いたように、作業が短くなることの先にも、変化があると感じている。

そして、振り返りを読むうちに、仕組みそのものにも手を加えたくなる。自分が知りたいことを考えて、AIと形にして、次に届いたものをまた読んでみる。

ランニングを楽しむために作り始めたものだが、今は走ることに加えて、その周りの道具を作ることも趣味になってきた。

著者について

宮崎真理

『AI×家事』著者

神戸大学大学院で生体計測工学を専攻し、修了後はオムロン株式会社で技術職として勤務。出産を機に10年間の専業主婦生活を経て、2023年より生成AIを家事・子育てに取り入れ、暮らしの中での活用を実践している。

WOMAN AI AWARD 2026 ライフ・イノベーター賞受賞。講談社「with class」でコラムを連載するほか、テレビ出演、雑誌・Webでの執筆・監修などを行う。

3兄弟の母。1000日以上にわたる生成AIの実践経験をもとに、理系出身・元専業主婦の視点から、家庭という最もテクノロジーが遅れた場所を、生活者自身がアップデートしていく可能性を発信している。

生活者がAIと自分用の道具を作る過程や、ウェアラブルの記録を日常で活かす工夫について、取材・執筆のご相談を承っています。

お問い合わせはこちら →